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2010年2月28日 (日)

『子どもの絵』

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カラーブックス615「子どもの絵 −成長をみつめて−」東山明・東山直美 共著 (昭和58年初版、現在絶版)

保育社カラーブックスシリーズの魅力をたっぷりとご紹介する「カラーブックスの達人」ブログ。第58回目は、純粋無垢な心を持っていた頃を思い出すカラーブックスをご紹介いたします。今回は、サラサラペタペタな一冊『子どもの絵 −成長をみつめて−』です。

子どもの頃から絵を描くのが好きでした。これは私だけでなく、みなさんも同じだったのではないでしょうか。子どもは絵を描くのが好きです。しかし、その絵がうまく描けているか、そっくりに忠実に描けているか、ということを意識して描く幼稚園児や小学校低学年の子どもは少ないと思います。子どもの描く絵は、発想も色も線も、大人になった私たちよりずっと自由で独創的です。これがいつ頃からなのか、人前で自分の描いた絵を見せることを恥ずかしく思ったり、うまくないことに劣等感を抱いたり、描いた絵を隠すようになります。あれだけ自由にのびのびと、そして楽しく描いていた絵が、「うまく見えるように描かなきゃ」と意識することでつまらなくなり、最終的には「ヘタクソだから描きたくないや」と、大人になって絵筆を置いてしまうのです。たとえ絵を描き続けている人がいたとしても、よくある水彩絵の具を使った風景画や果物を置いた静物画で、その絵柄もどこかの入門書に載っているような紋切り型の退屈なものばかりです。私たちは、いつ、どのようにして、あの子どもの頃のような自由と独創性と力強さを失ってしまったのでしょうか…。

本書は、子どもの絵を通して、子どもが何に興味を持ち、どのようなことに感動したかを探りながら、子どもの自己表現としての絵と、成長発達のありさまの理解を深めるという、子どもの絵を大人の視線ではなく子どもの立場になってあたたかく見つめる本です。著者は、神戸大学助教授(当時)で美術教育を選考していた東山明先生と、女子大学で非常勤講師をしていた妻の東山直美先生。著者は「はじめに」で、以下のように語っています。

「子どもの絵は、子どもが生きていることの証(あかし)である。ここに、子どもの絵の生命力と人間成長の素晴らしさを、皆様に伝えることができれば幸いである」

生きていることの証…。絵というものは、その人の生命力と心を映す「鏡」なのかもしれません。子どもの絵を評価し、誰でも絵を描くことの必要性を説いた芸術家・岡本太郎も、名著『今日の芸術』(光文社文庫刊)に書いています。

「絵を描くということは、たくましい本能の欲求であり、生命の喜び、知的活動として、だれでもが身のうちに持っているものです。(中略)先生がうまい必要はないのです。無心に、子どもたちと同じように下手な、しかし明朗でたくましい作品を描いていけば、たとえ子どもたちより不手ぎわでもかまいません。そんなことで威厳を失うなどと考えるのは、バカのコッチョウです。」

子どもと一緒になって自由な絵を描く、そんな先生に絵を習えば自信がつき、「どう描いたら褒められるか」とは考えず、「自分はこれをこう描きたい」という、真の意味での個性や自己表現が芽生えてくるのかもしれません。私は中学、高校と良い美術の先生に恵まれました。二人の先生は、うまく描いた絵よりも、独特な世界観を持った生徒の絵を褒め、また「もっと自由に描きなさい」と教えました。私は高校2年頃、現代美術と呼ばれるジャンルの作品鑑賞に傾倒していたのですが、それも既成概念にとらわれない自由な表現に共鳴し「自分もやってみたい」という欲求にかられたからかもしれません。

…さて、つい熱くなって前置きが長くなってしまいましたが、本書には、そんな自由でのびのびと描かれた子どもの絵が多数収録されています。子どもが成長していくに従って、その絵柄や表現が変化していくことも分かるような構成になっています。百聞は一見にしかず、子どもたちの自由で力強い、真の意味での芸術作品をご鑑賞くださいませ。

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↑一升びん(小学6年)
「外形だけではなく、立体感、ものの質感、透明感も表現できている。」超リアル描写ではないにも関わらず、台所の匂いまで感じるほどの描写力…脱帽です
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↑プールで泳ぐ(5歳)
「水にもぐる二人の子の上に水面が波打ち、その上、空中に浮いているのは、実は泳いでいるのである。この子はまだ横向きの人物がかけないので、正面向きになり、空中で泳いでいるようになったのだ。」てっきり、ターンして横跳びしているのかと…底には潜水で泳ぐ人の姿も。波の描写がダイナミックでイイ。

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↑自画像(大学三年)
「自分の顔を描くということは、成長する自分をじっくりと見つめ、自己の内面まで深く追求して絵に表すという意味で意義深いことだ」長い時間みつめていると、岡本信人の顔に見えてきた…。髪型とトックリのセーターに深夜ラジオのリスナー臭を感じるのは錯覚か…。
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↑スケート(小学二年)
「スケートに行ったことを、わざと面白おかしくかいている。人物の動きやリンクの広さのかき方は幼児期を脱した」この絵柄で浅田真央とキム・ヨナの対決を描いたら、それだけでピカソの『ゲルニカ』状態?
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↑私が船長ならこんな船を造りたい(小学五年)
「アイデアが泉のごとく浮かび、創造力満点の時期」まあ、ノンドラッグで造った『イエロー・サブマリン』とでも申しましょうか…。自分は、この手の「万能なんでも客船」系に弱いんですよねぇ。やっぱり原子力で動くんでしょうか。

さて、いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介いたしました『子どもの絵』は品切れですが、なんと保育社ウェブサイトの「ほいくしゃの本屋さん」ページにて、ワケあり商品の『子どもの絵』が残部僅少で販売されています(売り切れていたらごめんなさい)。ページへ急げ!詳しくはコチラへ←。さて、芸術入門のカラーブックスシリーズは、まだまだ在庫あり。さあ、みなさんも童心にかえって自由な絵を描いてみてください。ひょっとすると、とんでもない「名作」が生まれるかもしれませんよ。油絵や水彩などの道具の用意や知識は、このカラーブックスシリーズをどうぞ。ご購入希望の方はコチラ←から。今回は、ゲージツは爆発だ的な『子どもの絵』のご紹介でした。

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