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2011年11月30日 (水)

『デザイン』

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カラーブックス75「デザイン」小池新二 著(昭和40年初版、現在絶版)

保育社カラーブックスシリーズの魅力をたっぷりとご紹介する「カラーブックスの達人」ブログ。記念すべき第100回目は、思わず難しいことを考え込んでしまうカラーブックスをご紹介いたします。今回は、この表紙そのもののデザインがカッコイイ一冊、『デザイン』です。 

※↑カバー写真は、鋼鉄の工芸家 フリッツ・キューン(東ドイツ)の作品部分。こんな表紙が許されてしまうところがカラーブックスのイイところです。

現代美術というジャンルの世界で活躍している藝術家(アーティスト)に、会田誠(あいだ・まこと)という人がいます。その会田氏が26歳の1992年に発表した「デザイン」という一枚の絵画があります。それは、1986年に起きたスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故の映像を、彼がテンペラ・油彩混合技法で描いたものです。会田氏は、この作品について次のように書いています。

「このように、自分の個性をまったく加えず、そのまま描き写すことが美神によって許可されていると確信できる完璧なイコン——それを僕は〈デザイン〉と呼んだのですが——に出会う幸運は滅多にありません。なのでこの類似作はなかなか描けません。」(『会田誠作品集 孤独な惑星』1999年、DANぼ刊)

爆発事故による悲惨さ、遺族の悲しみ、といった悲劇をコンセプトに描いた作品ではありません。彼は、ボイジャー爆発事故の映像の一コマを、そのまんまそっくりに描いても許されるほど完璧な形(イコン)ととらえ、不謹慎さなど承知の上で、この作品に「デザイン」というタイトルを付けて発表したのです。私は、この作品解説を初めて読んだときの衝撃を、今も忘れることが出来ません。そう考えてみると、会田氏の作品群は、いろいろな〈デザイン〉の集合体であることに気がつきます。そのモチーフは、下品で下世話で大衆的なものもあれば、世界の古典的な芸術品までさまざまです。雑草しかり、原爆ドームしかり、パルテノン神殿しかり、ピンクチラシしかり、マンハッタンしかり、ルーズソックス姿の女子高生しかり、日本画しかり、消費者金融のティッシュしかり、国旗しかり、キングギドラしかり…。「デザインとは、そのまま描き写すことが美神によって許可されていると確信できる完璧なイコンである」。デザインについて、この定義以上の解説を、私はいまだに聞いたことがありません。

閑話休題。今回ご紹介するカラーブックスは、昭和40年当時における世界のさまざまな〈デザイン的なるもの〉を豊富なカラー図版とともに紹介した一冊です。ここでいう「デザイン」とは、単に工業製品の造形や、ポスター・雑誌に代表される印刷物の平面構成のことだけを指しているわけではありません。それは生活の中から生まれた伝統行事に用いられるお供え物であったり、暮らしの中から生まれた伝統的な建築意匠であったり、重箱や壺の装飾であったり、万国博覧会のパビリオンであったりとさまざまです。それは「意匠」という言葉や「機能美」と訳すこともできるかもしれません。この本では、「デザイナア(本文ママ)の役目は、工業製品がそのモノの本質的な性質を実現し、表現するように造形することにある」と説いています。そのような形や色や素材である必然性があるからこそ、そのような形や色や素材になった、という「機能美としてのデザイン」こそ「デザイン」の本質だと、この本は教えてくれるのです。著者は、千葉大学工学部教授であった小池新二氏。小池氏は、「はじめに」で以下のように語っております。

「日本ではデザインに関する書物の大半は、デザイナア相手の技法書で、デザインといえば一般にものの形や色を処理することのように思われています。この本はそのような社会通念を破って、一般の読者のためにデザインとはどういうものであるかということを知っていただこうとして書かれたものです。」

たしかに、デザイン書という言葉を聞くと、私たちはどうしてもデザインの技法を学ぶ本を思い浮かべますし、「物」そのものの処理という表面的な部分を想像してしまいます。さきほど上にも書きましたが、デザインというものの本質は、決して芸術作品のようなものよりも、市井のものや、実用的なものの中にこそあるような気がするのです。私はそういう意味では、『珍日本紀行』などで知られる編集者・都築響一氏の一連の仕事を尊敬していますし、日本の中でデザインというものの本質を理解している数少ない編集者の一人ではないかと思っています。都築さん、尊敬しています。それでは、決して表面的ではない本質的なデザインを取り上げた本書から、極めて表面的な理由で選んだカラー図版の数々をご紹介いたします。どうか怒らずにご覧下さい。

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↑ニューヨーク近代美術館収蔵のデザイン作品(グラフィック・デザイン)
マキシCD「石野卓球/stereo nights」ジャケの元ネタになったロシア構成主義のグラフィック(真ん中の8番)がステキ
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↑日本 トランジスタ・テープレコーダーTC802(ソニー)
やっぱりこの時代の日本の工業デザインは洗練されていますネ。これぞ機能美! すべてがYMO『テクノデリック』の世界観。こんなレコーダーにロボットボイスを録音したい…「TOKIO!」
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↑キャラバンの移動住宅
1964年、ミラノトリエンナーレ展に出品されたイギリスのデザイン。クライヴ・ラティマア指導の下、9名のデザイナアが協働したこのモビルシェルタアは、展開すると5つの床面が生まれ、居間、寝台、厨房はもちろん、トイレからシャワーまで設けられている。これも新しいライフデザインの一例ナリ。
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↑デンマークの新しい住宅(ボエルン・ボルジェソンの設計、1964)
いまや廃村と化した軽井沢の別荘地なんかには絶対にない、ヨーロッパならではの美しい居住空間。これは、建物だけでなく、風景や環境も含めて一つのデザインになっている好例。
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↑デザインソースとその発展。
日本の「曲わっぱ」から発展した照明器具(デンマーク)。プラスチックで曲わっぱのデザインを表現したところがおミゴト!


さて、いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介いたしました『デザイン』は絶版ですが、芸術入門に関するカラーブックスはまだ在庫がございますので是非どうぞ。ご購入希望の方はコチラ←から。今回は、そろそろMacで作ったデザインからの脱却をはかろうと思っている人たちに贈る『デザイン』のご紹介でした。次回は、もう第101回目。プロポーズしちゃうかも?! お楽しみに。

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