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2012年2月29日 (水)

『太宰治』

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カラーブックス215「名作の旅③ 太宰治」大竹 新助 著(昭和46年初版、現在絶版)

保育社カラーブックスシリーズの魅力をたっぷりとご紹介する「カラーブックスの達人」ブログ。第106回目は、俺の頬を殴ってくれっ!と思わず叫びたくなるカラーブックスをご紹介いたします。今回は、玉川上水でグッドバイな一冊、『太宰治』です。

私は、子どもの頃、親に連れられて伊豆を旅しました。まだ4歳くらいのことでしたが、この時の記憶は今もはっきりと脳裏に焼き付いています。伊豆半島の付け根に位置する三津浜は、とても静かな港町でした。その町の海沿いに「安田屋旅館」という旅館があります。純和風の数寄屋造り、その二階にある「月見草の間」に宿泊したのですが、その部屋こそ小説『斜陽』の第一章と第二章を書き上げた、太宰治ゆかりの部屋でした。太宰が誰なのか、子どもの私にはわかりませんでしたが、どうやらこの部屋で小説家の「ダザイオサム」とやらが有名な小説を書いた、ということは親から聞かされていたようです。窓からの景色、建物の雰囲気、朝食の様子、何もかも鮮明に残っているのです。これが,私の太宰治原体験なのでした…。

閑話休題。今回ご紹介するカラーブックスは、そんな太宰治ゆかりの地をカラー写真と作品の一部を引用して紹介した、カラー文学散歩な一冊です。著者は、写真家・随筆家の大竹新助氏。大竹氏は、「はじめに」で以下のように語っております。

「文学というものは、自分で読むべきものですが、その前に、その作家の一生や、思想なりを知っていますと、よりよく作品がわかるものです。そういう手引きとして、この本を作りました。(中略)わたしは、旅好きで、旅に文学を結びつけてみたかったのです。芭蕉が、歌によまれた風景を求めて『奥の細道』の旅にでたようなものです。日本文学には、よく漂泊の思想があり、“旅”につらなっています。この本も、旅と文学の書として編みました。どうか、この本をふところに、自由な楽しい旅を試みてください。」

たしかに、文学の舞台となった場所を旅するのは、どこかインテリな香りがする一方、文学に描かれていた時代の風景とのギャップに愕然とするという悲哀も含んでいます。すでに、このカラーブックスが発行された当時でさえ、昭和初期や戦後間もなくの頃の風景とは全く異なっていたに違いありません。私が幼少の頃訪れた「安田屋旅館」の写真も掲載されていますが、やはり当時の風景そのままだったわけではなく、これも時代の流れなのかと思うと切なくなってしまいます。それでは、太宰治作品ゆかりの風景を記録したカラー画像をたっぷりとご堪能ください。

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↑太宰治の生家「斜陽館」(青森県)
「その家は、この地方の大地主であった。生家はそのまま残って旅館となり、大地主の家の威容をいまも誇っている。」今は旅館から太宰治の記念館へと役割を変え、多くの人が訪れている。あれ、頭が小麦粉の袋みたいになった婆さんが孫と歩いてるゾ!
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↑晩年の太宰治(三鷹の仕事部屋で)
頬杖をついて、どこか虚ろな眼差しで明後日の方角を見つめる太宰。彼の代名詞ともいえるポーズは、ブロマイドにしたくなるほど絵になってます。「嗚呼、しば漬け食べたい…」
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↑太宰の住んだ三鷹の駅前
「太宰は甲州から三鷹に移り住んだ。そのころの三鷹は、東京府下三鷹村で、武蔵野の自然を残していた。駅も寂しい寒駅であった。それがいまは、駅もりっぱになり、都市化の波に洗われつつある。」大阪万博直後の三鷹駅前は、これまた今と大違い。太宰の見ていた三鷹の風景を見て三鷹った。
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↑『人間失格』にでてくる千葉県船橋−アサリ売りなどの海の街風景−
「船橋市は、泥海に臨んだかなり大きいまちであつた。新住民たるその友人の家は…中略…わからないのである。」いまの船橋にアサリ売りの声など響かない、響くのは船橋競馬場の歓声だけ…。
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↑太宰が世を去る日、友人宛に墨書した伊藤左千夫の歌
彼は、玉川上水の濁り水の中に、山崎富栄とともに入水した。雨の降り続いていた梅雨の頃であった。長雨で増水した上水の捜索は難航し、死体は6日後に発見されたという。…グッドバイ。


さて、いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介いたしました『太宰治』は絶版ですが、文学・歴史散策のカラーブックスはまだ在庫がございますので是非どうぞ。ご購入希望の方はコチラ←から。今回は、人間失格だけど憎めない『太宰治』のご紹介でした。

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