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2012年11月30日 (金)

『日本の民具』

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カラーブックス422「日本の民具 ―使われている雑器―」南雲治嘉 著(昭和53年初版、現在品切れ)

保育社カラーブックスシリーズの魅力をたっぷりとご紹介する「カラーブックスの達人」ブログ。第124回目は、素朴で日常的なカラーブックスをご紹介いたします。今回は、先人の智恵を集めた使える一冊、『日本の民具』です。

いまから10数年前、お花見に誘われた私は、京王井の頭線「駒場東大前」駅から歩いて目黒区駒場にある駒場公園に向かいました。旧前田公爵邸のある同公園は、日本近代文学館や庭園があり、毎年桜の時期になると多くの花見客でにぎわっています。その公園に向かう途中、ある建物に気がつきました。外の看板には「日本民藝館」と書かれています。お花見が優先だったため、その施設に立ち寄ることはありませんでしたが、「あれはいったい何だったんだろう…」と心のどこかにひっかかったままだったのです。あれから十数年、あの民芸館とやらは何だったのか気になったので調べてみると、ここは美学者で思想家の柳宗悦氏が創設した、日本の伝統的工芸品を収蔵展示する美術館でした(柳宗悦氏の長男は世界的に有名なインダストリアルデザイナーの柳宗理氏)。柳氏は白樺派に参加、生活に即した民芸品に注目して「用の美」を唱え、民藝運動を起こしました。昭和11(1936)年には、この「日本民藝館」を創設、庶民の生活の中で生まれた道具(民具)を広く紹介しています。花見の途中で偶然みつけた民具(民芸)の美術館、今度また花見に行く時にでも、この美術館を覗いてみようと思います。

閑話休題。今回ご紹介するカラーブックスは、そんな生活に根ざした民具を紹介した、「用の美」あふれる一冊です。著者は、東京デザイナー学院教授でグラフィックデザイナーの南雲治嘉氏。南雲氏は、「はじめに」で以下のように語っております。

「民衆が日常使用している生活雑器のすべてを、私は民具と呼ぶことにしました。その中には、古くから伝えられてきたものもあれば、最近、作り出されたものもあります。民具は、使う人がその必要性から作る場合や、職人が作る場合もあります。しかしそれら伝統的な民具は、まさに今、失われようとしています。」

たしかに、有名なデザイナーがデザインした製品もそれはそれで美しいのですが、必要に応じて作られた形ほど美しいものはありません。これこそ、いわゆる「アノニマスデザイン(作者未詳のデザイン)」であり、庶民の手で作り上げられた純粋な「美」といえるのではないでしょうか。今回ご紹介するカラーブックスは、現代まで生き抜いてきた民具たちを、懐古的や趣味的にとらえるのではなく、デザイン的に、道具本来の使われる美しさとして取り上げた一冊です。民具の入門書であるとともに、民具を実際に使うための手引き書であることを目的としています。それでは、江戸以前から昭和まで「時の試練」に耐えてきた「用の美」の道具を、素敵なカラー写真でじっくりご堪能ください。
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↑むしろ(岡山県・倉敷市)
むしろの良し悪しは織りの緻密さにある。昔からのものでもかなり大胆な柄が織られる。「花むしろ 時代を超越 むしろ良い」
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↑提灯職人の様子(石川県金沢市)
提灯の紋を入れる仕事もあなどれませんゾ。いまはお盆や祭でもない限り、提灯を下げることはありませんが、地方都市を旅したときに見かける昔ながらの提灯はなんともいえません。「うれしいと 眼鏡が落ちる 職人さん」
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↑いろいろな地方の手づくりおもちゃ
大人も思わず欲しくなる素朴でかわいいおもちゃ。鳩車は、たしか野沢温泉(長野県)の名産だったような。鬼太鼓の鬼さん、漫画みたいなイイ顔してます。あ、餓鬼車の顔もNHKの教育テレビに出て来る人形のような…。
「あやしたら かえって泣いた 鬼太鼓」
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↑絵馬(千葉県東金市)
素朴なうちに温かさのこもる絵馬。「誰だ!絵馬に落書きしたのは!」と怒らない怒らない!これぞ、元祖下手ウマイラスト、ですよね。「ムカ絵馬」(みうらじゅん)ならぬ、「ナゴ絵馬」(和む絵馬)ですな、こりゃ。
「絵馬を見て 僕にも描ける 子が自慢」
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↑神楽(福島県)
福島県只見に伝わる郷土芸能。お面の顔もいいけれど、後ろでくつろぐおっさんたちの顔がイイなぁ。右端のサングラスのおじさんは今お元気でしょうか、あ、時計が光ってら。
「獅子舞を 差し置きお面が カメラ目線」


さて、いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介いたしました『日本の民具』は品切れ中ですが、芸術入門のカラーブックスは在庫があるようです。この機会に是非どうぞ。ご購入希望の方はコチラ←から。今回は、無名なものに本物の良さがることを再認識させてくれる一冊『日本の民具』のご紹介でした。

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